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宇宙活動法改正に向けた動き(その 2)

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I. はじめに

前稿においては、現行の人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(平成28年法律第76号)(以下「宇宙活動法」という。)の概要、「宇宙活動法の見直しに関する小委員会」が公表した宇宙活動法の見直しの基本的方向性についての中間とりまとめ(以下「中間とりまとめ」という。)[1]の内容を概説した。

宇宙活動法の見直しに関する小委員会における議論及び中間とりまとめの内容を踏まえ、2025年6月から「宇宙活動法改正ワーキンググループ」において、宇宙活動法改正に関する議論が進められている。

そこで、本稿においては、宇宙活動法改正ワーキンググループにおいて議論されている宇宙活動法改正案を概説する。

II. 宇宙活動法改正ワーキンググループ

宇宙活動法改正ワーキンググループは全5回の開催が予定されており、各回の開催日時と議題は以下のとおりである[2]。宇宙活動法の改正に関するとりまとめの議論は2025年後半に行われる予定である。

回数

日時

議題

1

2025年6月4日

許可制度の全体像等

2

2025年7月下旬

各論(その1)

3

2025年9月下旬

各論(その2)

4

2025年10月下旬

とりまとめ(その1)

5

2025年11月下旬

とりまとめ(その2)

第1回のワーキンググループでは、宇宙活動法の改正案として、①航空法と宇宙活動法の適用関係に係る整理案、②宇宙物体に係る整理案、③宇宙活動法に係る許可制度の整理案が内閣府宇宙開発戦略推進事務局から提示された[3]。それぞれの整理案の概要は以下のとおりである。

A. 航空法と宇宙活動法の適用関係に係る整理案

航空法と宇宙活動法の適用関係に係る整理案の概要は以下のとおりである。

航空

高高度飛行

宇宙活動

有人

宇宙活動法の対象外

※ただし、有人サブオービタル機の試験飛行の場合は対象

宇宙活動法の対象

宇宙活動法の対象

無人

宇宙活動法の対象外

※ただし、無人サブオービタル機の試験飛行の場合は対象

宇宙活動法の対象

※ただし、軽量のもの等公共の安全に及ぼす影響が乏しいものは対象外

宇宙活動法の対象

※ただし、デブリは対象外

整理案では、高高度とは、航空機の能力を勘案し、航空機が飛行することが想定されない成層圏以上の高度(具体的な数値は政令で定める。)を想定する旨記載されている。

B. 宇宙物体に係る整理案

宇宙物体に係る整理案の概要は以下のとおりである。

整理案

許可制度案

宇宙物体

宇宙機

人工衛星

人工衛星管理許可

探査機

特定探査機

(月面・月周回軌道)

特定探査機管理許可

探査機管理許可

宇宙機以外

国内打上げ

宇宙物体の打上げ許可

国外打上げ

危険物

危険物搭載許可

危険物以外

許可対象外

1. 宇宙物体

現行の宇宙活動法上、「人工衛星」とは「地球を回る軌道若しくはその外に投入し、又は地球以外の天体上に配置して使用する人工の物体」(2条2号)と定義されている。これに関し、整理案では、人工衛星の「使用する」という概念に制約されない「宇宙物体」という概念を新設することを検討する旨記載されている。

2. 宇宙機

整理案では、「宇宙機」とは「宇宙物体であって、その位置、姿勢その他の状態を制御するための無線設備(電磁波を利用して、符号を送り、又は受けるための電気的設備及びこれと電気通信回線で接続した電子計算機をいう。)その他の設備を搭載したもの」をいう旨記載されている。

3. 人工衛星

現行の宇宙活動法上、「人工衛星」とは「地球を回る軌道若しくはその外に投入し、又は地球以外の天体上に配置して使用する人工の物体」(2条2号)と定義されている。これに関し、整理案では、「人工衛星」の定義を見直してこれを「地球周回軌道上の制御可能な宇宙物体」に限定した上、新たに「探査機」、「特定探査機」という概念を新設することを検討する旨記載されている。

4. 探査機

整理案では、「探査機」とは「宇宙機」のうち、地球を回る軌道の外に投入されるもの又は地球以外の天体上に配置されるものを想定する旨記載されている。

5. 特定探査機

整理案では、人による活動が現実に活発に行われている天体を「特定天体」として政令で定めることを想定し、これを探査する「探査機」を「特定探査機」と想定する旨記載されている。

C. 宇宙活動法に係る許可制度の整理案

宇宙活動法に係る許可制度の整理案の概要は以下のとおりである。

行為場所

行為

許可の名称

地球周回軌道未達

高高度往還飛行

(地上→高高度→地上)

高高度往還飛行許可

高高度ロケットの打上げ

(地上→高高度)

高高度ロケット打上げ許可

地球周回軌道上

宇宙往還飛行

(地上→軌道→地上)

宇宙往還飛行許可

宇宙物体の打上げ

(地上→軌道)

宇宙物体打上げ許可

危険物の打上げ

危険物搭載許可

再突入

(軌道→地上)

再突入許可

※「宇宙機」の再突入を許可対象とする。

人工衛星の管理

(軌道)

人工衛星管理許可

地球周回軌道外

特定探査機の管理

(軌道外)

特定探査機管理許可

その他

探査機の管理

(軌道外)

探査機管理許可

現行の宇宙活動法においては、人工衛星の打上げ等に係る許可(4条1項)及び人工衛星の管理に係る許可(20条1項)という2種類の許可のみが規定されている。

これに対し、整理案では、現時点で事業化が想定できる宇宙活動については制度上も全て対応するとの方針の下、高高度における活動に関する許可(高高度往還飛行許可及び高高度ロケット打上げ許可)の新設や、人工衛星の管理に係る許可の細分化を行い、上記表のとおり整理することを検討する旨記載されている。

III. おわりに

本稿においては、宇宙活動法改正ワーキンググループにおいて議論されている宇宙活動法改正案を概説した。次稿においては、その後の宇宙活動法改正ワーキンググループにおける議論及び宇宙活動法改正案のアップデートを取り上げることを予定している。


[1] https://www8.cao.go.jp/space/comittee/31-katsudou_minaosi/k_m-chukan/honbun.pdf

[2] https://www8.cao.go.jp/space/comittee/32-kaisei_wg/k_wg-dai1/siryou1.pdf

[3] https://www8.cao.go.jp/space/comittee/32-kaisei_wg/k_wg-dai1/siryou2.pdf