概要
米国カリフォルニア州は、デジタル資産規制の分野において米国内で特に大きな影響力を有する州です。2026年7月1日に施行されたカリフォルニア州のデジタル金融資産法(以下「DFAL」)への対応は、多くの業界関係者にとって当面の最重要課題となっています。最近の立法および審議中の法案を見ると、同州のデジタル資産規制は、取引所規制にとどまらず、ライセンス制度、カストディ、マネーロンダリング対策、未請求のデジタル資産、受託者によるアクセス、公正性、さらにはデジタル資産市場における銀行・信用組合の役割などを対象とする、より包括的な枠組みへと広がりつつあります。
また、これらの立法や審議中の法案からは、デジタル資産規制をめぐる連邦・州間の役割の変化が見て取れます。特にSB 97(DFAL修正・ステーブルコイン法案)は、DFALのステーブルコインに関する独立した条項を削除する一方で、カリフォルニア州独自の包括的なライセンス制度および監督体制は維持しています。また、不成立に終わったAB 2285(デジタル金融資産銀行法)で提案されたステーキングやカストディをめぐる議論は、今後も続くことが予想されます。
注目すべき主要法案
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法案 |
状況 |
主な論点 |
重要性 |
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SB 97 (Grayson議員):DFAL修正・ステーブルコイン法案 |
成立 |
DFALのステーブルコインに関する独立した条項を廃止するとともに、規制対象となる活動を限定し、適用除外およびライセンス要件を明確化 |
DFALの施行をより現実的なものにし、ステーブルコイン規制の一部を今後整備される連邦規制の枠組みに委ねる方向性を示す |
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SB 1208 (Grayson議員):デジタル資産の差押・没収法案 |
審議中 |
マネーロンダリング対策および没収制度の対象をデジタル金融資産にも拡大し、ウォレットやデジタル資産口座の差押えを認める |
州が定めるデジタル資産執行法制としては米国内でも重要な位置を占める可能性があり、適正手続、カストディ、没収制度、被害者救済(原状回復)をめぐる議論に焦点をあてる |
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AB 2335 (Valencia議員):デジタル資産準備金・返還法案 |
審議中 |
デジタル資産請求準備口座、デジタル資産準備基金、デジタル資産準備委員会を創設し、カストディ、清算、および請求者への資産返還に関するルールを制定 |
従来の未請求財産管理の枠を超え、デジタル資産関連準備金の保管・管理を政府が担うことの是非など、より広範な論点を提起 |
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AB 2409 (Valencia議員):公務員倫理・ミームコイン規制法案 |
審議中 |
特定の公職者によるミームコインの発行を禁止し、一定のデジタル資産の取引所への上場を制限 |
デジタル資産にも既存の倫理、開示および公正性に関するルールを適用しようとする動きとみられる |
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AB 2199 (Macedo議員):委任状・受託者権限拡大法案 |
成立 |
デジタル資産および電子通信について、委任状(power of attorney)に基づく権限を拡大 |
カストディアン、受託者、遺産設計に携わる専門家、信託管理者、資産運用プラットフォームに影響を及ぼす |
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SB 122:ソフトウェア・SaaS増税法案 |
成立 |
ソフトウェアおよびSaaS製品に対するカリフォルニア州課税を拡大 |
デジタル資産を直接対象とするものではない一方、取引所、カストディアン、トークン化プラットフォーム、分析サービス提供事業者など、デジタル資産関連事業者の運営コスト増加につながる可能性 |
不成立のAB 2285-なお注目されるデジタル金融資産銀行法
デジタル金融資産銀行法(DFAB)として提案されていたAB2285は、2026年6月29日に予定されていた上院司法委員会での審理が中止となり、第二院での政策審査期限までに審議を終えることができなかったため、不成立に終わりました。しかしながら、同法案は今会期において特に注目されたデジタル資産関連法案の一つといえます。
提案の内容は、州免許銀行および信用組合が、デジタル資産のカストディ、取引、ステーキング(デジタル資産保有者が資産をロックして取引検証に参加し報酬を得る仕組み)を行うことを認めるものでした。これらの業務にはコンプライアンス、監査、サイバーセキュリティ、開示、マネーロンダリング防止(AML)、カストディに関する広範な要件を課すことが盛り込まれており、中でも最も議論を呼んだのはステーキングの取扱いでした。支持派は、カリフォルニア州の金融機関も他州の銀行と同様にステーキング業務を提供できるようにし、競争力を維持すべきだと主張した一方、反対派は、ステーキング報酬を証券としての扱いから除外すれば投資家保護や金融保護・イノベーション局(DFPI)の監督権限を弱める恐れがあるとしました。
同法案の不成立は、ステーキング、証券規制、消費者保護、そしてデジタル資産市場における伝統的金融機関の役割をめぐる議論が、なお継続していることを示しています。これらの論点は、今後の立法会期で改めて検討される可能性があります。
政治・規制上の見通し
カリフォルニア州は、今後も包括的なデジタル資産規制の枠組みを維持する方針とみられます。制度運用、消費者保護、公正性の確保、または執行を目的とする措置は、規制当局の権限や投資家保護を弱めると受け止められる提案に比べ、議論がスムーズに進行してきました。
2026年後半に向けての主な注目点としては、DFALの施行状況、連邦のステーブルコイン規制とカリフォルニア州への影響、AB 2285不成立を受けたステーキング・カストディ規制の行方、そしてデジタル資産の所有権、資産返還、没収、相続、未請求財産に関する立法動向が挙げられます。
多くの事業者にとって、DFALの下でのライセンス取得およびコンプライアンス対応が、依然として最優先の実務課題となります。