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FCC宇宙近代化シリーズ:可変軌道宇宙局に関する新たなライセンス制度

本シリーズのこれまでの記事では、米国連邦通信委員会(FCC)による宇宙ライセンス規則の全面的な見直しについて解説してきました。具体的には、FCCによるマイルストーンおよび保証金要件の改定、新たなライセンス制度の枠組み、地球局のライセンス手続の改革などを取り上げました。本稿では、FCCの2026年7月付け報告書および命令(Report and Order、R&O)のもう一つの側面である、従来の静止軌道(GSO)または非静止軌道(NGSO)の枠組みに必ずしも当てはまらない宇宙機のための新たなライセンスカテゴリーの創設について検討します。FCCの「21世紀に向けた宇宙近代化」報告書および命令に関するさらなる分析については、本シリーズの過去のアラートをご参照ください。

新たな「可変軌道宇宙局(VTSS:Variable Trajectory Space Station)」カテゴリーは、その軌道特性が従来の通信衛星とは異なる宇宙機に対応するために設計されています。VTSSの創設は、宇宙ライセンス制度に対するFCCのアプローチの転換を意味します。すなわち、FCCは、従来型の通信衛星を主な対象として構築された既存の規制カテゴリーに、新たな宇宙事業者が自らのミッションを無理に当てはめることを求めるのではなく、Part 100の下で、可変軌道プロファイルを有し、複数の軌道領域にまたがって活動する可能性のある宇宙ミッションに対応するための独立したカテゴリーを設けています。この新たな制度枠組みは、多様な新興宇宙活動に対して規制上の道筋を提供しつつ、それらの活動の運用上および宇宙安全上の特性に対応した要件を定めるものです。

新しい宇宙活動のための規制上の受け皿

Part 100の下で、FCCはVTSSシステムを以下のように定義しています。

「一つ以上の宇宙局から構成されるシステムであって、静止軌道を超えて運用される、または、その運用期間中において固定的若しくは予測可能なパターンを持たずに運用されるものをいい、かつ単一の宇宙局コールサイン(識別符号)の下で運用されるもの。」

VTSSシステムには、軌道間輸送機(Orbital Transfer Vehicles)、ランデブー・近接運用(RPO)プラットフォーム、宇宙内サービス・組立・製造(ISAM)システム、月その他の天体への移動・周回・それらの天体での運用を含むミッションなどが含まれますが、これらに限定されません。

VTSSへの分類に当たっては、特定の技術や商業活動の種類ではなく、宇宙機が可変的な軌道特性を有しているか否かが判断基準となります。FCCは、将来の宇宙ミッションが既存の規制カテゴリーに当てはまらない可能性があることから、R&Oに示された上記の例示は代表例に過ぎず、網羅的なものではないと説明しています。一方で、ある宇宙活動が単に新規性を有するという理由だけでVTSSに該当するわけではなく、FCCは、宇宙機の可変的な軌道経路こそが、分類上必須の要素であることを強調しています。したがって、たとえ従来にない新しい宇宙機であっても、固定的なGSOまたはNGSOの構成で運用されるものについては、引き続き既存のGSOまたはNGSOの制度枠組みが適用される場合があります。

運用エンベロープを中心としたライセンス制度

VTSS制度の中心的な特徴は、単一の固定的な軌道構成に限定されない宇宙機を対象とした点にあります。つまり、サービス用宇宙機、軌道間輸送機、その他の可変軌道システムにおいては、ミッションの進行に伴い高度、軌道傾斜角、または軌道領域を変更する場合があることを前提とした制度といえます。そのため、Part 100では、VTSSの申請者に対し、「運用エンベロープ」、すなわち宇宙機が運用される高度・軌道傾斜角・その他の軌道パラメータの範囲を示すことを求めています。また、申請者は、これらの正確な情報が未確定の場合には、展開パラメータおよびミッションフェーズを一定の範囲で示すことも認められています。

この制度のもとでは、ライセンシーは、認可された運用範囲内で宇宙機を運用する限り、軌道変更や高度変更を行うたびにライセンス変更申請を行う必要はありません。FCCは、申請時の段階で運用エンベロープを評価し、そのパラメータの範囲内での運用を認可することができます。このアプローチにより、事業者は、従来の衛星コンステレーションのように将来のあらゆる軌道状態を高精度で予測することなく、合理的に実施すると見込まれるミッションについて認可を取得することが可能となります。

VTSSミッションに合わせた制度設計

Part 100は、VTSSシステムの運用特性に合わせてライセンス制度を設計しています。改定後の制度では、VTSSライセンシーは、特定のNGSOシステムに適用される展開マイルストーンおよび保証金要件の対象外となります。また、VTSS宇宙局のライセンス期間は原則として20年ですが、申請者はより短いライセンス期間を申請することもできます。さらに、FCCは、可変軌道ミッションの特性およびリスクに対応した申請要件および運用要件を定めています。これらには以下が含まれます。

  • 宇宙機の識別および追跡可能性:申請者は、宇宙機の識別・追跡に必要な情報を提供し、追跡可能性要件への準拠を証明しなければなりません。また、地球軌道での運用が認可されたVTSS衛星は、その最小寸法が10cmを超えるものでなければなりません。
  • 宇宙安全および衝突回避:VTSS申請者は、衝突リスクの軽減、人的被害リスク、運用終了時のパッシベーション(燃料や電力の残留エネルギーを除去する措置)、その他の宇宙安全上の考慮事項に対処しなければなりません。ライセンシーはまた、承認された宇宙状況認識(SSA)プロバイダーに登録し、衝突回避の調整に必要な連絡先情報を常に最新の状態に維持しなければなりません。
  • エフェメリス(軌道情報)および共分散データ:VTSS事業者は、SSAおよび衝突回避のため、特に計画されている機動やRPOに関連して、所定のエフェメリスおよび共分散情報を提供し、継続的に更新しなければなりません。
  • ランデブーおよび近接運用:RPOを提案する申請者は、計画している運用内容や、相互作用が予想される宇宙機に関する情報を提供しなければならず、これには想定される衝突リスクをどのように軽減するかや、デブリ発生に関する考慮事項も含まれます。
  • 月面およびGSOを超える運用:GSOを超えて展開するミッションの申請者は、計画中の運用に関する追加情報を提供しなければなりません。これには、該当する場合、月もしくはその他の天体への移動中に、またはその周辺で運用される際に、探索機器やローバーとの間で行われる通信に関する情報も含まれます。申請時点で詳細が確定していない事項については、所定の期限までに後日提出することが認められています。

これらの要件を総合すると、VTSS制度は、運用上の柔軟性と、継続的な情報共有および調整義務とを組み合わせたものであることがわかります。すなわち、Part 100は、事業者に対して、ライセンス申請段階で将来のすべての機動を詳細に特定することを求めるのではなく、承認された運用エンベロープ内での運用を認める一方、運用期間中は、ライセンシーに対し、衝突その他の宇宙安全リスクを管理するために必要な情報の提供を義務付けています。

移行に関する考慮事項

原則として、FCCはPart 25に基づく既存のライセンシーのPart 100への移行を認めていません。したがって、Part 100の下ではVTSSとして分類され得る事業者であっても、既存のPart 25ライセンスを保有している場合には、そのライセンスをPart 100へ転換することはできません。ただし、R&Oは、効率性の向上が見込まれる場合または「移行によって生じる重大な問題」を解決できる場合には、「宇宙局(Space Bureau)はPart 25のもとでライセンスを受けたライセンシーによるPart 100へのライセンス転換を認めることができる」と規定しています。

また、R&Oの採択前後にかかわらず、Part 100規則の施行日前に提出された申請は、審査・決定を行う時点で適用される規則に従って処理されます。施行日前に審査が完了した申請については既存のPart 25の規則のもとで審査される一方、施行日後も係属中の申請については、宇宙局はPart 100の審査プロセスを適用する方針です。

宇宙内サービス・組立・製造(ISAM)に関する独立した規則制定手続の終結

FCCはまた、ISAMに関する独立した規則制定手続を終了しました。VTSSの定義を満たすISAMミッションについては、Part 100によって既に規制上の道筋が提供されているため、ISAM専用の独立したライセンス制度はもはや必要ないと結論付けたものです。一方で、新興の宇宙事業(通信および指揮・制御機能を含む)のスペクトラム利用可能性に関する「Spectrum Abundance for Weird Space Stuff」と呼ばれる独立した規制制定手続については、引き続きFCCで審議が継続されています。