Skip to main content

トランプ政権、2030年までに年間1,000回の打上げ・再突入を目指す国家宇宙輸送政策を発表

2026年8月20日、ドナルド・トランプ大統領は「国家安全保障大統領覚書第17号」(NSPM-17)、すなわち「国家宇宙輸送政策」を発出し、米国の宇宙輸送に関する新たな連邦政策の枠組みを確立しました。本政策は、連邦政府機関に対し、打上げ・再突入能力の拡大、連邦射場への商業アクセスの拡大、支援インフラの近代化、空域・周波数帯の制約への対応、国内の宇宙輸送産業基盤の強化、および連邦ミッションにおける商業輸送サービスの利用拡大を指示するものです。また、2030年までに米国の宇宙輸送用射場が年間1,000回を超える打上げ・再突入を支援するという国家目標も掲げています。NSPM-17は、2013年に発出された国家宇宙輸送政策に取って代わり、これを廃止するものです。

本政策は、米国の商業宇宙産業の規模拡大と競争力強化を図るトランプ政権の広範な取組みを反映しています。NSPM-17は、新たな許認可制度を創設するのではなく、実施責任を運輸省(DOT)、商務省、戦争省(DOW)、NASA、連邦通信委員会(FCC)、国務省、内務省その他の機関に分担させています。本政策の主要な指示事項の多くには90日、120日、180日または240日の実施期限が設けられており、打上げ、再突入、宇宙港、宇宙内輸送、連邦契約および関連インフラに携わる企業にとって、今後の各機関の措置が重要な意味を持つことになります。

打上げ・再突入能力の拡大を目指す

NSPM-17の中心的な焦点は、米国の打上げ・再突入インフラの設備および運用体制を強化することです。本政策は、DOWおよびNASAに対し、政府機関および民間利用者の双方に対応する連邦打上げ・再突入用射場を運用するよう指示するとともに、連邦政府機関に対し、連邦施設への商業アクセスを促進するよう求めています。外国機体の再突入要請については、大統領科学技術担当補佐官および大統領国家安全保障担当補佐官が、関係機関と連携しつつ、個別に審査を行います。また、各機関は、連邦資産に対する設備投資に関して、リース、商業投資および官民パートナーシップの活用を検討し、施設の許認可・環境審査を迅速化するとともに、共有インフラサービスに関する公正で透明性のあるコスト回収方針を策定することが求められています。 

本政策の発出から180日以内に、DOWはNASAその他の関係機関と連携し、政府による射場利用を確保しながら、商業利用者が射場資源を最大限効率的に活用できるよう、連邦射場のスケジューリング基準を策定しなければなりません。同じく180日以内に、DOTは別途、追加の打上げ施設の候補地または重点的にインフラを改善すべき箇所を特定し、打上げ・再突入管理をより広範な空域・航空管制近代化の取組みに統合するとともに、重要な宇宙打上げ回廊(打上げルート)に使用する優先空域を特定しなければなりません。 

また、本政策は新たに、再突入インフラの整備にも重点を置いています。内務省は90日以内に、追加の指定連邦再突入場となる連邦用地を特定しなければなりません。DOTは180日以内に当該用地の安全基準を評価し、商務省は240日以内に商業利用、インフラ整備および共同開発の機会に関する開発計画を策定しなければなりません。 

NSPM-17はさらに、DOWに対し、宇宙への迅速かつ即応的なアクセスを阻害する要因について検討するよう指示しています。これには、優先度の高い民間および国家安全保障上のミッションのために、必要が生じてから48時間以内に打上げを実施できる能力や、遠征地からの打上げを実施できる能力の確保が含まれます。

周波数帯・空域を宇宙輸送インフラとして位置付ける

本政策は、打上げ頻度を向上させるためには、打上げ施設や射場の増設だけでなく、空域および周波数帯へのアクセス拡大も必要であるとの認識を示しています。商務省とFCCは、商業および連邦政府による打上げ、再突入、回収ならびに軌道上活動のための信頼性の高い周波数帯へのアクセスを確保しなければならず、その対応方針について本政策の発出から180日以内に大統領に報告しなければなりません。 

この方針の実施は既に開始されています。2026年8月25日、FCCは、公示「大統領の国家宇宙輸送政策の目標達成に向けた宇宙打上げ活動のための信頼性のある周波数帯へのアクセスの確保」(Docket No: 13-115、 RM-12025)を発出し、宇宙打上げ・再突入活動のための信頼性のある周波数帯へのアクセスを確保するために講じ得る具体的な措置について意見を募集しています。意見の提出期限は2026年9月14日、これに対する応答意見の提出期限は同月24日です。 

DOTおよびFAAも同様に、「新規宇宙港の立地選定および重要な宇宙打上げ回廊のための優先空域の利用」(Docket No. FAA-2026-9736)と題した情報提供依頼(RFI)を発出し、新規宇宙港の候補地および重要な宇宙打上げ回廊のための優先空域の整備についての意見を募集しています。FAAは、ケープカナベラル宇宙軍基地、ケネディ宇宙センターおよびヴァンデンバーグ宇宙軍基地が現在、米国の打上げの約83%を占めていると指摘し、連邦射場の処理能力が今後の成長を妨げるボトルネックになり得るとの見解を示しています。本RFIに対する意見の提出期限は2026年10月26日です。

 宇宙輸送産業基盤戦略の策定を要求

NSPM-17は、科学技術担当補佐官に対し、関係機関と連携の上、180日以内に宇宙輸送産業基盤戦略を策定・実施するよう指示しています。同戦略は、競争力と強靱性を備えた国内産業の促進、宇宙輸送能力および費用対効果の向上、サプライチェーンの強靱化ならびに人材の育成・確保の支援を目的としています。また、この戦略は、2年ごとに見直しを行い、必要に応じて更新されることとされています。

NSPM-17はまた、国際的な商業競争力にも言及しています。国務省と商務省は、120日以内に、米国の宇宙輸送能力に関連する輸出政策および関連施策を見直し、更新しなければなりません。この見直しでは、米国外への販売、共同投資・共同開発、市場アクセス、規制の整合化、技術保護および産業振興が重点分野として挙げられています。国務省と商務省はまた、DOWと連携の上、国家安全保障、不拡散およびその他の米国の利益と整合する形で、同盟国・パートナー国に対する米国の宇宙輸送能力の輸出機会を拡大するために、輸出管理制度についても見直しを行うことが求められています。 

外国機体の打上げ・再突入要請は個別審査の対象に

本政策は、商業目的で外国の宇宙機体を米国から打ち上げること、または米国への再突入を許可することを求める要請について新たに審査手続を定めています。科学技術担当補佐官および国家安全保障担当補佐官は、審査に必要な情報を受領してから60日以内に審査結果を取りまとめ、大統領に勧告を行わなければなりません。

この審査では、国家安全保障、外交政策および不拡散上の利益、米国の宇宙産業基盤の競争力への影響、米国の宇宙市場への検証可能な外国直接投資、責任・補償に関する取決めならびに連邦打上げインフラとその利用可能性への潜在的な影響が考慮されます。そのため、この審査枠組みは、外国の打上げ事業者、投資家、合弁事業ならびに外国機体または外国資本を伴う提携を検討している米国の宇宙港事業者に影響を及ぼす可能性があります。

連邦政府機関に対し商業宇宙輸送の優先利用を指示

NSPM-17は、連邦政府による商業宇宙輸送サービスの活用を促進するものです。DOWおよびNASAは、米国政府の需要を満たすに当たり、商業宇宙輸送サービスを優先的に利用するよう指示されており、公共安全上または国家安全保障上の懸念がない限り、米国の商業事業者の市場機会を損ない、またはこれらと競合するような政府輸送活動を控えるよう求められています。各機関はまた、政府ペイロードの打上げについて複数の選択肢を確保し、調達を調整し、新規参入者の認証における一貫性向上、ホステッドペイロード(他社の衛星への搭載)およびライドシェアの機会拡大を図るよう求められています。ペイロードを別の機体へ迅速に振り替えられるよう、標準化された宇宙機インターフェースの開発も指示されています。 

本政策は、原則として、米国政府のペイロードは米国製の機体で打ち上げられるか、または宇宙空間で輸送されなければならないと定めていますが、一定の国際協力プログラム、副次的な科学技術ペイロードおよびホステッドペイロードの取決めについては例外を設けています。NSPM-17は、どの程度の米国製部品又は要素を含めば米国製の機体と認められるかについては明示していません。 

NSPM-17で定められている商業輸送政策は、打上げ・再突入の範囲を超えた領域まで及んでいます。同政策の下、NASAは、月面との間の商業輸送を可能にする月面ロジスティクス・アーキテクチャを策定するとともに、火星への無人・有人輸送に関する商業的アプローチを検討するよう求められています。さらにDOWは、宇宙空間における商業輸送・ロジスティクスサービスを推進し、軍事アーキテクチャの策定に際してこれらのサービスを考慮するとともに、移設可能な設備を含む迅速かつ強靱な打上げ体制を検討するよう求められています。

実務上の留意点

本政策は、宇宙輸送産業基盤全体に広範な影響を及ぼすものです。打上げ・再突入事業者は、新たな連邦射場に関する省庁横断的な審査や整備計画の策定において自社の利益が適切に考慮されるよう、内務省、DOT、商務省および科学技術政策局(OSTP)への働きかけを検討することが有益と考えられます。また、業界にとっては、打上げ・再突入機体および射場の事業者に適用される輸出管理の見直し・改革に関与する好機ともいえ、産業安全保障局(BIS)および国防貿易管理局(DDTC)の双方に意見提出を行うことも検討に値します。