2026年第2四半期は、宇宙・衛星セクターのインフラ整備段階への移行がさらに進みました。打ち上げ、契約獲得、提携・技術実証に関する発表といった個別の動きがあった一方で、規制執行、周波数戦略、政府調達、運用面の強靭化、投資採算性をめぐる動向には業界全体で共通の方向性がみられました。商業宇宙システムは地上通信、政府機関のミッション、国家安全保障アーキテクチャ、地球観測、そして軌道上の安全性において、重要なインフラとしての位置づけを強めています。
そうした中、衛星通信分野の動きが特に注目されました。連邦通信委員会(FCC)は、衛星による通信エリア補完、direct-to-device(端末直結型)の周波数戦略、衛星ブロードバンドの調整に関する取り組みを前進させました。これらの動きは、衛星と地上通信の融合が、ライセンス条件、周波数利用権、混信管理、サービス展開計画、事業者間の調整義務といった要素によって、ますます左右されるようになっていることを示しています。
政府需要は、引き続き商業宇宙市場の方向性を決定づけています。NASAは商業衛星データの取得を拡大し、民間による低軌道(LEO)宇宙事業および探査事業への支援を継続しています。また、Space Systems Command(SSC)は、防護通信、衛星による監視・観測、および低軌道衛星コンステレーションによる通信・データ伝送に関連する大型契約を発表しました。商業宇宙市場は米国政府の予算や調達方針、米国政府が採用するOTA(Other Transaction Authority)やIDIQ(Indefinite Delivery、Indefinite Quantity) といった契約制度、サイバーセキュリティ、データ権利の取扱い、システム間の連携性、運用の信頼性確保、顧客集中リスクといった要素と密接に結びついています。
運用面でのガバナンスも、商業宇宙事業の計画における中心的な検討事項となりつつあります。米国商務省によるTraCSS(宇宙交通調整システム)の利用拡大、機動応答型打ち上げやランデブー/近接運用(RPO)の実証、SSA(宇宙状況把握)/SDA(宇宙領域認識)への継続的な取り組みは、軌道上の混雑への対応、安全運航に関するデータの活用、ならびにリスクや責任の分担が、事業者、保険会社、融資機関および取引先にとって、ますます重要な関心事となっています。宇宙ビジネスを取り巻く環境は、より成熟する一方、より複雑なものとなっており、規制上の承認、周波数やデータに関する権利、調達経路、資金調達構造、運用リスク管理、そして国際的なコンプライアンス対応について、より早い段階での連携が求められています。
Regulation & Policy
FCCの一連の措置により、衛星通信と携帯電話ネットワークの融合はライセンス・周波数規制の段階へ
FCCは第2四半期に、衛星を活用した通信に関する規制枠組みを大きく進展させました。2026年4月21日、FCC宇宙局は、AST SpaceMobileに対し、米国内での衛星による通信エリア補完、および米国外での携帯端末直結型サービス(direct-to-cell)向けに、248基からなる非静止衛星(NGSO)コンステレーションの展開・運用を条件付きで認可しました。同年5月12日には、FCCは次世代端末直結型通信(direct-to-device)ネットワーク向けに使用される約65 MHzの中帯域周波数に関する、SpaceXとEchoStarの周波数割当て申請を承認しました。同月13日には、FCCの衛星ブロードバンドに関する周波数共用命令が米国連邦官報に掲載されました。同命令は、NGSOおよびGSOの固定衛星サービス事業者間で誠実な協議・調整を行う義務を拡大するとともに、技術的な安全措置を導入するものです。こうした動きは、衛星通信と携帯電話ネットワークの融合が、ライセンス、周波数利用、コンプライアンス対応を中心とする段階に移行しつつあることを示しています。
国防宇宙分野は、商業統合型アーキテクチャを引き続き重視
SSCが第2四半期に発表した複数の契約締結やプログラム更新からは、防護通信、分散型低軌道アーキテクチャ、衛星による監視・観測、光データ伝送に対する需要が引き続き根強いことがうかがえます。SSCは、ViasatおよびIntelsat General Communicationsに対し、Swarm 1衛星向けのProtected Tactical SATCOM-Globalに関する総額4億3,770万ドルの固定価格契約2件を付与しました。また、Space-based Airborne Moving Target Indicator(宇宙配備型空中移動目標探知)プログラムについて、SpaceXに41億6,000万ドル規模のOTA契約を付与したほか、2027年末までにプロトタイプを構築予定の、光通信で相互接続された分散型低軌道衛星からなるデータ伝送基盤「Space Data Network Backbone」の構築に向けた22億9,000万ドル規模のOTA発注契約を行いました。これとは別に、下院軍事委員会によるFY27国防授権法(NDAA)の委員長案では、商業宇宙分野、商業衛星による監視・観測、CASR、宇宙データネットワークに関する事項が、議会が注視すべき分野として挙げられました。SSCが発表した一連の契約は、国家安全保障に関わる宇宙分野において、民間企業の役割が一段と重要になっていることを示すとともに、防衛宇宙事業に伴う複雑な制度・運用上の課題を浮き彫りにしています
NASAの商業データ戦略は、調達制度とデータ権利に引き続き焦点
NASAは、民生宇宙分野および地球観測のニーズに対応するため、民間企業の活用を引き続き進めています。2026年6月18日、NASAは4億7,600万ドルを上限とするIDIQ契約に基づき、商業衛星データ取得プログラムに8社を追加するとともに、既存の契約企業6社による新たなデータ提供項目を追加しました。NASAのFY27予算要求の概要では、商業低軌道開発に3億ドルが計上されているほか、ISS(国際宇宙ステーション)の運用終了に向けた投資の継続や、商業低軌道拠点および「Moon to Mars」構想への注力がみてとれます。
TraCSSの導入拡大により、宇宙交通調整は実運用の段階へ
2026年6月9日、米商務省宇宙商業局は、TraCSSについて、SSAおよび宇宙飛行安全サービスを提供する、既存の衛星所有者・運用者向けパイロットプログラムに加え、政府機関アカウントの受け入れを開始したと発表しました。TraCSSは依然として試験運用・評価段階にありますが、その拡大は、衛星運用事業者、SSA/SDA関連事業者、保険会社、政府機関および同盟国政府が、安全運航データの活用、アカウント管理、サービス水準に対する期待、宇宙交通の調整、責任分担にどう対応していくかに影響を与える可能性があります。衛星コンステレーションの規模拡大と近接運用の増加に伴い、安全運航データや運用面での調整は、デューデリジェンス、契約、保険およびコンプライアンス対応において、今後さらに重要性を増す可能性があります。
EUが安全な通信基盤の整備を推進 同盟国市場のモデルとなるか
欧州委員会は、インフラ整備と産業政策の両面から、安全な通信基盤の整備を進めています。2026年5月28日、欧州委員会はIRIS2/GOVSATCOM向けユーザー端末の実用化に関し、2,000万ユーロ規模の助成金公募を開始しました。対象は、Kaバンド端末の導入準備、サプライチェーンの強靭化、5G NR NTN(非地上系ネットワーク)への移行です。GOVSATCOMは2026年1月から暫定ハブサービスとして運用されており、同年6月25日には、ドイツ・ケルンにおける常設GOVSATCOMハブ拠点の起工を欧州委員会が発表しました。これらの動きは、市場アクセス、端末のサプライチェーン、提携戦略、安全な通信の調達、戦略的自律性の確保に関する要件、そしてEUの助成金・調達機会への参加基準に影響を与える可能性があります。
Space & Satellite Insights
Iridium買収案件が、スペクトラム・加入者基盤・インフラ統合の重要性を浮き彫りに
2026年6月29日、Rocket Labは、Iridiumを企業価値約80億ドルで買収する最終契約を締結したと発表しました。Rocket Labが強みとする打ち上げ・製造能力と、Iridiumが持つLバンドネットワーク、加入者基盤、保有する周波数資産、衛星サービスを組み合わせる構想が示されています。この買収は、衛星・宇宙インフラ市場における垂直統合の動きを象徴する注目すべき案件といえますが、取引完了には、株主承認、規制当局の承認、資金調達およびクロージング条件などを満たす必要があります。
NASAの商業パートナーシップに関する動きが、リスク分担の課題を提起
第2四半期、NASAは商業探査や宇宙サービス分野において、多様な商業パートナーシップを進展させました。2026年6月17日、NASAは計画中の火星大気科学ミッション「Aeolus」に関して、費用償還型のSpace Act Agreement(宇宙法協定)に基づき、Relativity Spaceとの官民パートナーシップを発表しました。同月11日には、NASAのニール・ゲーレルズ・スウィフト観測衛星に接近(ランデブー)および軌道上昇を行うことを目的とした、Katalyst Space Technologies社による「LINK」計画について説明しました。また同月9日には、Blue OriginおよびSpaceXの商業有人着陸システムの試験機を用いた、地球軌道上でのランデブーおよびドッキング実証を含むArtemis III計画の詳細を発表しました。民生宇宙プログラムにおいて、商業事業者が担う役割は一段と重要性を増しています。
機動応答型打ち上げとRPOが、商業事業者の国家安全保障上の役割の重要性を示す
2026年6月22日、SSCは、米宇宙軍が主導する起動応答型宇宙ミッションの実証実験であるVICTUS HAZEミッションにおいて機動応答型打ち上げの実証を完了し、軌道上での運用を開始したと発表しました。SSCによれば、Rocket Labは打ち上げ指令から48時間以内にElectronロケットの起動・打ち上げを行い、また随伴機となるTrue Anomaly社の「Jackal」機は、これに先立つ同年5月3日にすでに打ち上げられていました。機動応答型打ち上げおよびランデブー/近接運用は、今後の国防調達、打上げライセンス、運用の安全性、輸出管理、ミッション保証義務、保険・責任分担、そしてSSA/SDAや機動応答型宇宙ミッションへの商業参加に影響を与える可能性があります。