概要
- CIT の命令により、輸入者は IEEPA(国際緊急経済権限法)関税の還付を受ける権利を有します。
- 還付対象は、未精算(unliquidated)および精算済み(liquidated)の輸入申告に対して支払われたIEEPA関税です。
- 還付が実行される時期は現時点では未定です。
2026 年 3 月 4 日、国際貿易裁判所(CIT)は米国税関・国境警備局(CBP)に対し、IEEPA に基づいて支払われた関税の還付を命じました。司法省(DOJ)が控訴中の執行停止を申し立てる可能性があります。
本命令に基づき、CBP はすべての未精算の輸入申告を 「IEEPA 関税を適用せずに」 精算しなければなりません。また、精算済みであっても確定前の申告については 「IEEPA 関税を適用せずに」 再精算する必要があります。これは、これまでに支払われた IEEPA 関税を CBP が還付しなければならないことを意味します。ただし、命令の対象は「未精算」のものと、精算済みであっても「未確定」のものに限定されている点に注意が必要です。
CIT の命令では、輸入者が CIT に訴訟を提起しているかどうかにかかわらず、還付を受ける権利があることが明示されています。還付金は記録上の輸入者(Importer of Record)に対して発行されます。
精算と確定の仕組み
米国税関・国境警備局(CBP)が簡素化された還付プロセスを公表する可能性がありますが、輸入者は迅速に対応できるよう、以下の準備を検討することが考えられます。米国法(19 USC 1504、1505)に基づき、関税は輸入時に支払われ、貨物は輸入日から 1 年以内に精算(liquidation)されます。19 USC 1514 により、輸入者は精算日から 180 日以内に不服申し立て(protest)を行うことができ、この期間を過ぎると精算は確定(final)します。
今回の命令では、すでに確定し 180 日の不服申し立て期間を過ぎた申告については言及されておらず、還付対象となるかは不透明です。IEEPA 関税の対象となる多くの申告は未精算、または精算済みでも不服申し立て期間内であると考えられますが、期間外の輸入者は還付の可能性を確保するため CIT への提訴を検討すべき場合があります。
控訴手続きが進む間、輸入者は精算日を監視し、不服申し立て期間が終了する前に必要な手続きを行うことが推奨されます。
今後の見通しと懸念事項
継続的な訴訟が予想されるため、還付がいつ実行されるかは不透明です。連邦議会では、還付処理に 180 日の期限を設ける「2026 年関税還付法(Tariff Refund Act of 2026)」などの法案が提出されていますが、早期に審議される可能性は低いとみられます。
還付に関連して、以下の企業・訴訟リスクも指摘されています。
- 消費者訴訟のリスク:関税コストを消費者に転嫁していたかどうかにかかわらず、「関税の還付は消費者の犠牲の上に成り立つ輸入者の不当な利益(windfall)である」として訴訟が提起される可能性があります。不当利得や価格吊り上げ(price gouging)などの主張が法廷で認められるかは不透明ですが、リスク軽減策を検討しておく必要があります。
- M&A への影響:買収契約において、クロージング前の期間に発生した関税還付(IEEPA に限らず、将来他の法令に基づく関税が無効とされた場合の還付も含む)をどちらの当事者が受け取るかを明確に規定することが重要です。