IEEPA関税還付の最新情報
2026年3月12日、米国税関・国境警備局(CBP)の貿易プログラム担当エグゼクティブ・ディレクターであるブランドン・ロード氏は、先月最高裁により無効とされた国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税の還付プロセス開発の進捗状況について、国際貿易裁判所(CIT)へ報告しました。ロード氏によれば、CBPは還付申請ポータルの開発を70%完了しているとのことです。
CITへの提出書類によれば、CBPが提案している還付プロセスは以下のとおりです。
- 申請者は輸入申告(エントリー)のリストをCBPの申請ポータルにアップロードし、CBPがデータの正確性とファイルのアクセシビリティを確認する。
- CBPがリストを受理した後、一括処理プログラムを使用してIEEPA関連のHTS番号を除外し、その他の関税の再計算を行う。
- システムは申告を審査し、精算または再精算を行う。必要に応じてCBPが手動で審査し、利息を計算する機会も設ける。
- 還付金は輸入者および精算日ごとに集約される。
CBPの進捗を受け、リチャード・イートン判事は、IEEPA関税を除外した精算およびその他の再精算を命じる命令の執行停止を継続しました。同判事は、CBPが還付プロセスの開発において「適時完了に向けて満足のいく進捗」を示していると判断し、2026年3月19日に次回の進捗報告を行うよう当局に指示しました。
通商法301条調査:グローバルな「構造的過剰生産能力」
15カ国およびEUの製造過剰生産能力に関する301条調査の開始
2026年3月11日および12日、米国通商代表部(USTR)は、1974年通商法301条に基づく広範な一連の調査開始を発表しました。最初の調査対象は、製造部門における「構造的過剰生産能力」および「過剰生産」を招いている16の主要貿易相手国の「行為、政策、慣行」です。
USTRは、対象国が世界的な需要から「切り離された」生産レベルを維持しており、その結果として継続的な貿易黒字が生じ、米国の国内生産を圧迫し、サプライチェーンの回復力を脅かしていると主張しています。
- 主な調査対象国: 中国、EU(特にドイツとアイルランドを指名)、日本
- アジアの主要貿易相手国: 韓国、台湾、シンガポール、ベトナム、マレーシア、インドネシア、タイ、カンボジア、バングラデシュ、インド
- その他の地域: スイス、ノルウェー、メキシコ
- 対象セクター: 自動車・部品、半導体・電子機器、鉄鋼・アルミニウム、バッテリー・太陽光モジュール、化学、医薬品、医療機器など、現代の製造業のほぼ全域
調査の主な正当化理由
USTRは、以下の指標や慣行を「不合理な」貿易行為の証拠として挙げています。
- 低い設備稼働率:世界の製造業の稼働率はおおむね 75% 前後で推移しており、「健全」とされる 80% の基準を下回っていること。
- 継続的な貿易黒字:政府政策により国内需要が抑制され、過剰生産分が輸出に回されていること。
- 非市場的慣行:補助金、補助金付き融資、為替慣行、不十分な労働・環境保護など、人工的にコストを引き下げていること。
- 「ゾンビ」企業:利払い能力がないにもかかわらず営業を継続している不採算企業が中国や日本で増加していること。
タイムラインおよびパブリックコメント
USTR は、 「各調査対象国が特定セクターにおいて構造的過剰生産能力または過剰生産を生じさせ、あるいは維持している行為・政策・慣行」 およびその他関連事項についてコメントを募集しています。
コメント受領後、USTRはこれらの慣行が301条の対象となるかを判断するため、公聴会を開催します。スケジュールは以下のとおりです。
- 2026年3月17日:コメント提出および公聴会出席要請のオンラインポータル開設
- 2026年4月15日:書面によるコメントおよび公聴会出席要請の提出期限
- 2026年5月5日:ワシントンC.にて公聴会開始
- 公聴会終了から7日以内:反論コメント(rebuttal comments)の提出期限
通商法301条調査:強制労働調査
2026年3月12日、USTR は米国の主要貿易相手国 60 カ国を対象に、強制労働によって生産された製品の輸入禁止措置を導入し、効果的に執行することに失敗している点について、通商法301条に基づく調査を開始したと発表しました。これらの調査は、グローバルサプライチェーンにおける強制労働を対象とする米国の通商執行手段を拡大するものであり、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)や、従来の CBP による輸入差止命令(WRO)とは異なる新たなアプローチを示しています。
UFLPA や関連する CBP の執行が、強制労働で生産された特定の製品の米国への輸入を阻止することに焦点を当てているのに対し、トランプ政権は今回の新たな 301 条調査において、外国政府が同様の禁止措置を採択・執行しないことが「不合理または差別的であり、米国の通商を圧迫または制限しているか」を検証すると述べています。 要するに、USTR はサプライチェーンにおける強制労働の存在だけでなく、外国政府の規制対応(またはその欠如)を、米国法の下で対処可能な通商問題として評価しています。
調査の範囲
USTR の今回の措置は、以下を含む幅広い経済圏を対象としています。
- 主要貿易相手国:中国、EU、カナダ、メキシコ、日本、韓国、インド、オーストラリア、ブラジル、英国
- 主要地域経済:ベトナム、マレーシア、インドネシア、タイ、バングラデシュ、香港、シンガポール、その他アフリカ、中東、南北アメリカの諸国
強制労働がグローバルサプライチェーンに広く存在することから、調査対象セクターも多岐にわたります。特に、農業、繊維、衣料、電子機器、鉱物、その他の製造業など、米国労働省の「児童労働・強制労働による製品リスト(2024年版)」に掲載されている産業が中心となります。
調査の正当化理由と新規性
USTRが外国政府による強制労働禁止措置の不作為を301条に基づく「不合理な」貿易慣行として直接対象とするのは今回が初めてです。これは、特定の製品や地域に対する既存の輸入禁止措置を補完する新たなアプローチです。 USTRは、人道上の必要性に加え、強制労働によって人工的に低価格となった輸入品との競争を強いられる米国の労働者や企業に対する不利益な競争影響も指摘しています。
タイムラインおよびパブリックコメント
USTR は今回の調査に関し、以下の事項について広く意見を募集しています。
- 対象国が、強制労働による製品の輸入禁止措置を維持しているか、または導入に向けて取り組んでいるか
- そのような措置が不十分である場合に、米国通商へ与える影響(輸出機会の喪失、価格下落、賃金低下など)
- 関税や輸入制限を含む潜在的な救済措置およびその適切な範囲
主要日程
- 2026年3月17日:コメント提出および公聴会出席要請のオンラインポータル開設
- 2026年4月15日:書面によるコメントおよび公聴会出席要請(証言要旨の提出を含む)の提出期限
- 2026年4月28日:米国国際貿易委員会(ITC、ワシントンC.)にて公聴会開始(必要に応じて5月1日まで継続)
- 最終公聴会日から7日以内:公聴会後の反論コメント(rebuttal comments)の提出期限
潜在的な影響
USTRは、今回の2種類の301条調査について、調査対象国の製造慣行が米国の通商を圧迫または制限しているか、または強制労働に対する有効な禁止措置の欠如が米国法の下で対処可能な貿易慣行に該当するかを判断します。USTRの勧告に基づき、大統領は追加関税やその他の貿易制限措置を発動する可能性があります。
各国は個別に調査されますが、EUは一つのグループとして調査されます。新たに課される301条関税は、既存の一般税率(General Rate)や最恵国(MFN)税率、アンチダンピング(AD)関税、相殺関税(CVD)、その他の既存の関税に上乗せされる可能性があります。
ジェイミソン・グリア氏によれば、政権は2026年2月24日に課された10%の通商拡大法122条関税の期限(2026年7月24日)までに、今回の調査を完了させたい考えです。
第1次トランプ政権は、中国からの大半の製品に対し25%または追加7.5%の301条関税を課しており、これらは現在も維持され、裁判所での争いにも耐えてきました。
対象国や対象セクターにサプライチェーンを有する企業は、追加関税のリスクを評価し、調査プロセス(意見提出など)への参加を検討することが望まれます。